NFTとは?
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTとは簡単に言うと、「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。
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NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。
つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。
NFTが必要とされる理由
世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。
それぞれの例を挙げていくと、
【替えが効くもの (代替性) 】
- 硬貨や紙幣
- フリー素材の画像や音楽
- 量産される市販品
【替えが効かないもの (非代替性) 】
- 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
- ゴッホの「原画」
- ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」
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人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。
一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。
実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。
そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。
NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。
NFTの秘める可能性
NFTによって唯一性や希少性が担保され、デジタル領域でも ”所有” が可能になります。
アート、音楽、ゲーム、ファッション、スポーツといったあらゆる業界で ”所有” に関するルールが変更となる可能性があるのです。
あなたが買った楽曲データを誰かに売ることができるようになる。
あなたが作成した画像を誰かに売ることができるようになる。
もうやらなくなったゲーム内のアイテムを誰かに売ることができるようになる。
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これまで人類は、土地や物といった物理的な物を所有し価値を高め、売買・交換することで経済活動を行ってきました。それと同じことがデジタル領域でも起こりうるということです。
かつてインターネットやスマホ、SNSが目新しいモノだった時期がありました。でも今は誰もが当たり前のように使いこなし、社会・人々の生活を一変させました。
NFTも同様に今後の社会を変える大きな可能性を秘めています。
NFTとブロックチェーン
NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。
ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。
ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)
ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。
ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。
ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。
一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。
ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。
ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)
ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ、④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。
これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。
ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。
従来のデータベースの特徴 | ブロックチェーンの特徴 | |
---|---|---|
構造 | 各主体がバラバラな構造のDBを持つ | 各主体が共通の構造のデータを参照する |
DB | それぞれのDBは独立して存在する | それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている |
データ共有 | 相互のデータを参照するには新規開発が必要 | 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要 |
ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。
参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!』
NFTはなぜ話題に?
NFTが話題になった大きな理由の一つは、信じられないような高額の取引でしょう。
2021年3月22日には、『Twitter』の共同創設者兼最高経営責任者(CEO)のジャック・ドーシー(Jack Dorsey)によって2006年に呟かれた ”初ツイート” がNFTとしてオークションに出品され、約3億1500万円という驚愕の金額で売却され大きな話題を集めました。
出典:IT media NEWS「TwitterのドーシーCEOの初ツイートNFT、3億円超で落札 全額寄付」
また、同年3月にデジタルアーティストであるBeeple氏がNFTアートとして競売に出したコラージュ作品「Everydays: the First 5000 Days」が6900万ドル(日本円で約75億円)という値が付きました。これは、オンラインで取引されたアーティストのオークション価格史上最高額を記録し話題を呼びました。
出典:IT media NEWS「老舗Christie’s初のNFTオークション、デジタルアートが約75億円で落札」
ただし注意すべき点は、もちろん全てのNFTに値段がつくわけでは無いということです。むしろ、上記のような高額取引は稀でしょう。
ある人が大事にとってある ”思い出の石ころ” に値段がつかないのと同様、そのデジタルデータに対して価値があると人々が判断し、ようやくそのNFTに値段がつくのです。
しかし、デジタルデータに価値が付き売れるようになったという事実が、時代の大きな転換点であることに間違いはありません。
NFTの取引所(マーケットプレイス)
NFTを売買するには、NFTマーケットプレイスを利用します。アートや音楽、映像、ゲームのキャラクターやアイテムなどの売買ができるさまざまなNFTマーケットプレイスがあります。
NFTマーケットプレイスは先述のブロックチェーン技術を土台としており、マーケットプレイスごとに土台とするブロックチェーンの種類も異なります。
現在世界最大手のOpenSeaをはじめ、LINE NFTやCoincheck NFTといった様々なNFTマーケットプレイスが国内外に存在し、取り扱いコンテンツや決済可能な暗号資産もそれぞれ異なるため、出品者や購入者は取引する場所を用途に合わせて選ぶ事ができます。
参考記事:『NFT×マーケットプレイス〜取引所の概要から選び方・それぞれの違いを解説〜』
NFTの活用事例
NFT×アート
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絵画やアートの分野でも、NFTの技術が使われ始めています。
多くの場合、アートや絵画はPhysical(物理的)なものとして作られる場合がほとんどです。NFT登場前のデジタルアート作品はコピー・複製が可能なため、高い価値をつけるのが難しいというのが現実でした。しかしNFTの技術により、コピー不可能なデジタルアートを作成できるようになり、先述したBeeple氏のように75億円で取引されたNFTアートも存在しています。
ちなみに日本国内では、村上隆氏やPerfumeといった著名人が、続々とNFTアートを発表しています。国内のアート分野でもNFT技術の活用が徐々に広まっていると言えるでしょう。
参考記事:『【2022年最新版】アートへのNFT活用事例集』
NFT×ゲーム
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現在のところ、もっとも認知されているNFTの活用事例がゲーム分野での利用です。
NFT技術を利用することで、自分が取得した一点物のキャラクターやアイテムをプレイヤー同士で売買することや、取得したキャラクターやアイテムを他のゲームで使うことも可能になります。ゲーム内で育成したキャラクターなどは二次流通市場で取引され、パラメータやレアリティが高いほど高値で取引されています。
「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」以外では、「My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)」や「Etheremon(イーサエモン)」といったゲームにもNFTが活用されています。
今後も、NFTの特色を生かしたブロックチェーンゲームが次々にリリースされることが期待されています。
参考記事:『NFT×ゲーム〜「遊んで稼ぐゲーム」について解説〜』
NFT×スポーツ
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アメリカのプロバスケットリーグであるNBAでは、『NBA Top Shot』というNFTを利用したサービスを開始しました。これは、NBA選手による名シーンをデジタルトレーディングカードで所有できるというサービスです。
『世界的に有名なプロスポーツ選手の決定的な名シーン』には、代えがたい価値があるはずです。誰もが感動しますし、ましてやファンにとっては垂涎の価値です。しかし、インターネット上には『決定的な名シーン』がたくさん転がっていて、お金を払うことなく誰もが気軽に見ることができてしまいます。
しかし、NFTによってNBA選手のデジタルトレーディングカードは、本物と区別される唯一無二の価値を持つことができ、ファンが所有する喜びを感じたり、ファンの間で売買できるようになりました。
『NBA Top Shot』は、立ち上げから数カ月で2億ドル(約210億円)を超える売り上げを記録しています。
参考記事:『NFTのスポーツ業界への活用〜新時代のファンビジネスと可能性〜』
NFTの課題と将来性
NFTによって、デジタル資産の取引が安心してできるようになりました。それによって、デジタルアートを購入したり、仮想空間を使って新しいビジネスの取引をしたり、ゲームの中で世界の人とアイテムの売買を行ったりすることができます。
最後に、NFTの解決すべき課題と将来性について解説します。
課題
法整備が整っていない
NFTはまだ歴史が浅いため、法整備が整っていません。
法律的な整備が進んでいないため、NFTの取引で金銭的な損失があった場合には、法律的な保護が受けられず自己責任となってしまうこともあるでしょう。
ガス代(ネットワーク手数料)が不安定
NFTを取引する際には「ガス代」と呼ばれるネットワーク手数料がかかります。
NFTの取引は主にイーサリアムというブロックチェーン上で行われ、NFTの「ガス代」はイーサリアムブロックチェーンを利用する際の手数料のことを意味します。そして、「ガス代」はイーサリアム上の取引が増えれば高騰し、減れば安くなります。つまり、需要によって手数料が大きく変化してしまう可能性があるということです。
参考記事:『【2022年】NFTの現時点での課題とは?〜革新的な技術に課せられた問題点〜』
将来性
2020年末の時点で300億円ほどと言われたNFTの市場規模は、2022年には約2兆円にまで急成長を遂げています。
出典:logmi.jp「NFT市場が2年で300億円→2兆円に急拡大したワケ
出典:coinpost.jp「2021年のNFT年間取引高、約2兆円に到達 前年比200倍」
NFTは現在、ゲームやアートといったエンターテイメント業界に関する適用が進んでいる状況です。しかしNFTはさまざまな可能性を秘めていると言われており、たとえば、同じものが2つとない不動産にNFTが活用されることも考えられます。すでにゲーム上に存在する土地の所有権にNFTが活用されているという事例も存在します。
今後のビジネス展開としては、NFTの「替えが効かないもの」という特徴を生かし、エンターテイメント分野の枠を超え、所有権証明や身分証明が必要なあらゆる分野で実用化が進んでいくと予測されています。
NFTはこれからのデジタル社会を大きく変化させる原動力となっていくことでしょう。